all songs written , played , and mixed by アベシュンスケ
recorded and mixed at 音楽室
jan.2020 – may.2020
mastered by 原 朋信 (cafe au label studio)
1. つんざく
雨の音だけを 身体に残して
眠る誕生日 まじないのように
どこを歩いても あの庭に着いた
錆び付く螺旋と だまし絵のカスケード
くすんだ青い花が開く
正しく生えた耳を
つんざく
歌が聴こえる
何もない部屋の中
私は目を開ける
歌が聴こえる
はじめての角度で
ひとり浮かび上がる
2. ランドルト
街灯が滲んで見える視力で
はっきりわかった 抜け道の方
砂場で拾った 魚の夢
児童公園の遊具 泳いでゆく
もう一個の月の下
ねぇ、どこかに着いたかな
ねぇ、誰かになったかな
ゴミ箱から顔出した
おばけが笑ってる
ピンク・フロイドのステッカー
剥がす深爪
未送信済みのメール
金木犀
こんがらがったまんま 砕けるような
お話しの最後 何度目かの
なし崩しの果てに
そう、どこでもないのにね
そう、誰でもないのにね
優しさをかき集めて
おばけに銃を向ける
残響に包まれ
黒い線が回る
もういつもの月の下
3. 西廻り
バス窓 知ったふうな眼
映した曇り空
もう一度
選んだ数字で
消えてゆく帰り道
朝露に濡れていた
火星みたいなくるぶし
真緑のリボンを
さあ 聞き分けの良くない
白髪の妹に
マシュマロ 盗んだ体温
揺られてる西廻り
薄い紅茶飲み干して
誓い交わす生き物よ
破ったばかりのしきたりを
思い出せるのかい?
バス窓 陽が撫でる首
流れた曇り空
壊れた橋を渡る
車輪のない錆びた箱
揺られてる西廻り
4. サマタウン
真昼の影は 私を離れ
見知らぬ街の 写真に消えた
国道にかかる 歩道橋の上
残りの部分で 鳥を数えた
汗で張り付いた シャツをつまんだ指
時の縫い目解く
回る日傘を すり抜けたなら
ここで会いましょう 女が笑う
ぬるい缶ビール 弾くコンクリート
乾いた虫が 淀みに浮かぶ
遠い歪みの中 息を潜めている
いちばん好きな季節
もう何の意味も無くなった色を
変え続けてるだけの信号機
いつか壁に書いた 文字を読み上げて
醒めない罰を受ける
5. 8 tracks
チョコレイトの舟が 沈む泥の海に
映る月を見たか 子供の私
晴れた朝になくした気持ちは
水に溶けて 戻らない涙
楽しくなれない動物が
彷徨う夢の跡
軋む家具の古い木の記憶
瞳閉じて俯く横顔
なびいたプリーツ数えては
探した栞紐
黒いオートバイが走る田舎道
汚れた窓から見下ろしている
どこにも繋がらない
やめたギターを雑に扱えば
切れた2弦が指に突き刺さる
上手に笑えたつもりかな?
薄い皮膚の向こう
安いラジカセが鳴らすボーカロイド
お祈りみたいに降り注いでも
等しく交わらない
またも同じカーブで滅びるのか
穏やかな春の日に 本物の春が来て
光の中 粉になってゆく
また逢えるよ 君が大好きだよ
病める時も 健やかなる時も
思い知るがいい 思い知るがいい
怖いくらいの銀色 空のどこにもないのに
確かに揺らめいては 闇を奏でる
足指の砂 払わずに歌え 年老いた私